ぼくらのストロベリーフィールズ



部屋を暗くして、それぞれの布団に入った。


私は何度も暗闇の中で寝返りを打っていた。



「のばら、寝れないの?」


「うん。何か、今日いろいろありすぎて……」



ショボい男に襲われかけたり、ナズちゃんとケンカしたり。


それもあるけど。


さっき一吾くんから聞いた話が、消化されないまま頭の中をさまよっていたから。



一吾くんの方から布団がこすれる音が鳴った。



「あのさ、さっき言い忘れたけど……」



彼のかすれた声が暗い部屋に響く。



「ここにいると、のばらが本当の家族みたいに思えて」


「え……」


「飽きない。てか、楽しいよ」


「…………」



私はその言葉に嬉しさを感じた。



暗いから、きっと顔がほころぶのを隠さなくてもいい。



私は一吾くんの家族みたいなものになれていたのだ。



「一吾くん」



ドキドキとさっきよりも心臓の音が激しくなっている。



「ん?」



「そっち、行っていい?」



「だめ」



「何で? 前まで一緒に寝てたじゃん」



そう口をとがらせると、再び一吾くんの布団がごそりと鳴った。


私の逆側に寝返りを打ったらしい。



「襲いたくなるから、だめ」



どくん、どくん、と体が震えそうなほどの鼓動が響く。



カラカラになった喉をごくりと鳴らしてから。



「一吾くんになら、いいよ」


と私は口にした。



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