ぼくらのストロベリーフィールズ



そのまま何度も抱き合った後、2人で眠りについた。



朝早くに一吾くんは出て行ってしまった。



私は、行かないでと彼にすがりついて止めることができなかった。



「うっ、ううっ……ひっく」



本当にこれで良かったのか、後悔にさいなまれて涙が止まらなかった。



彼が、布団から出て、服を着て、この部屋から出ていく時。


「邪魔すんじゃねーよ」と冷たく振り払われてしまったから。



彼は私を好きになることはないのだろうか。



でも軽いものから深いものまで、何回もしてくれたキスから感じたのは、彼自身の温もりで。


それは私を嫌いになりたくてするものじゃなかった、と思う。



「あ……」



テーブルの上にメモが置かれていた。



期待してそれを手にしたけど、


『鍵はポストに入れといて』としか書かれていなかった。



もっと他に書くことあるんじゃないの? と思いつつ、


これはこれで一吾くんらしいなとも思い、その文字ですら愛おしくなった。



でも。それにしても。



『ビビってんじゃねーよ、このマザコン野郎!』って……。



頭がカーッとなったからとはいえ、もっと別のこと言えばよかったな。



好きだよ、とか、愛してるよ、とか、



今だけは全てを忘れていいんだよ、とか。






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