ぼくらのストロベリーフィールズ
10-2
☆
「ほら、玉子固まってきたよ」
「やば。ぐちゃってなった。うわぁ」
フライパンの上で、焼いた玉子をくるくると巻く。
形はいびつだけど、数センチ幅で切るとちゃんと卵焼きっぽくなった。
あとはゆでたブロッコリーとウインナー。
ご飯にはふりかけをかける。
朝ごはんを作っている母の隣で、私は自分のお弁当作りにいそしんでいた。
「ふぁー。おはよー。お、のばらも作ってんの?」
「うん。お弁当に入りきらないやつ、朝ごはんに出しとくね」
「ほら、父さんも早く顔洗って。今日電車遅れてるらしいから」
「ふぁーい」
父は出張が隔週くらいになり、家から出社することが多くなった。
母は夕方までの介護パートを始め、空いた時間で資格の勉強を始めていた。
「のばらの卵焼き、美味しいじゃん」
「本当ー? あ……ねーお父さん。ちょっと聞きたいことあるんだけど」
「お、何だー?」
父と2人で食卓を囲んでいる時、私はずっと疑問に思っていたことを尋ねてみた。
「あのさー、何でこの家って部屋が多いの? うち3人家族なのに」
「建売住宅だからもともとレイアウト決まってたんだよ」
もぐもぐと口を動かしながら父が答えた。
すかさず母が、汚いな~食べながらしゃべんないの、と注意した。
「どした? 急に」
「や、ほら奥の和室って使ってないじゃん。空き巣に入られたのもそこからだったし。
危ないし、もったいないなぁって」
一応、和室は来客用としてローテーブルと座布団を置いているけど、
家庭訪問の時やセールスが来た時にしか使っていない。
朝ドラをぼーっと眺めていると、遅刻するよ、と母に急かされた。
「いってきまーす。あ、今日バイトだから遅くなるね」
「はいはい。気をつけてね」
私は居酒屋バイトを続けていて、忙しい時はキッチンを手伝わせてもらえるようになった。
一吾くんが抜けた穴を埋めるべく、新しい仕事を頑張って覚えた。