ぼくらのストロベリーフィールズ

10-2








「ほら、玉子固まってきたよ」


「やば。ぐちゃってなった。うわぁ」



フライパンの上で、焼いた玉子をくるくると巻く。


形はいびつだけど、数センチ幅で切るとちゃんと卵焼きっぽくなった。



あとはゆでたブロッコリーとウインナー。


ご飯にはふりかけをかける。



朝ごはんを作っている母の隣で、私は自分のお弁当作りにいそしんでいた。



「ふぁー。おはよー。お、のばらも作ってんの?」


「うん。お弁当に入りきらないやつ、朝ごはんに出しとくね」


「ほら、父さんも早く顔洗って。今日電車遅れてるらしいから」


「ふぁーい」



父は出張が隔週くらいになり、家から出社することが多くなった。


母は夕方までの介護パートを始め、空いた時間で資格の勉強を始めていた。



「のばらの卵焼き、美味しいじゃん」


「本当ー? あ……ねーお父さん。ちょっと聞きたいことあるんだけど」


「お、何だー?」



父と2人で食卓を囲んでいる時、私はずっと疑問に思っていたことを尋ねてみた。



「あのさー、何でこの家って部屋が多いの? うち3人家族なのに」


「建売住宅だからもともとレイアウト決まってたんだよ」



もぐもぐと口を動かしながら父が答えた。


すかさず母が、汚いな~食べながらしゃべんないの、と注意した。



「どした? 急に」



「や、ほら奥の和室って使ってないじゃん。空き巣に入られたのもそこからだったし。

危ないし、もったいないなぁって」



一応、和室は来客用としてローテーブルと座布団を置いているけど、


家庭訪問の時やセールスが来た時にしか使っていない。



朝ドラをぼーっと眺めていると、遅刻するよ、と母に急かされた。



「いってきまーす。あ、今日バイトだから遅くなるね」


「はいはい。気をつけてね」



私は居酒屋バイトを続けていて、忙しい時はキッチンを手伝わせてもらえるようになった。


一吾くんが抜けた穴を埋めるべく、新しい仕事を頑張って覚えた。



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