ぼくらのストロベリーフィールズ



雑草がまばらに生えた土手を下ってきたのは、いかにも不良な中学生2人組だった。


1人はピンで前髪を上げた可愛い系の男で、もう1人は切れ長の目が特徴的な金髪の男。



『やべ。あいつらやばいやつらじゃん』


『逃げた方がよくね?』



ザコ2人がそわそわし始める。


ボスもちっと舌打ちをした後、手にしていた小石をぱらぱらと砂利に落とした。



『へーおまえらいじめやってんの? ママが知ったらどう思うかな~?』



そう言って前髪をピン止めにした男子が、ボスの胸倉をつかんで宙に持ち上げた。


ボスはじたばたとダサく足を動かすが、その男はかなりの腕力の持ち主らしく全く動じない。



『ち、ちがいます……っ、離してくださいっ!』



抵抗するボスに対して、


『ぎゃはは! んだら、助けてママァ~! って叫んでみちゃう?』


と、金髪の男子がふざけながら、大声を出した。



うわーっとザコ2人が逃げ出した時、すでにボスは涙目になっていた。



『うっ、やめてください、お願いします~っ』


『あ、ちげーべ? 助けてママァ~! だろーが』



情けない声を出すボスに対し、金髪の男は裏声で叫ぶ。


胸倉をつかんでいるもう1人はその声に爆笑しだした。



『た、助けてぇ、ま、ママぁ~!!』


『は? へったくそがぁ! もっとスネちゃまっぽく言ってみろやぁ』



前髪ピン止め男が、そのボスを勢いよく砂利に落とした。



『うっ! ごめんなさいごめんなさい……』



『うわーお前泣かせたー! 悪いやつ~!』


『俺、男泣かす趣味ないんだけど、とか言ってみたりしてー!』



ぎゃははははー!



僕は状況が全く読めず、その場に突っ立っていると。



『一吾、一吾~』



後ろの方から僕を呼ぶ声が聞こえ、振り返ると准クンがいた。



大丈夫? と口パクで僕に伝えてくれたけど、その手にはスマホがあった。


もしかしてさっきの下手くそなモノマネを撮影していたのだろうか。



准クンのそういうとこ、嫌いじゃない。



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