ずっと、君に恋していいですか?
志信は薫の体を引き寄せ、強く抱きしめた。

愛しい匂いが鼻孔をくすぐり、薫と過ごした幸せだった日々の記憶が胸に溢れた。

(オレの好きな薫の匂いだ…。こうして薫を抱きしめるのも…これでもう…ホントに最後なんだな…。)

薫の髪に、志信の涙が落ちる。

志信の腕の中で、薫は嗚咽を抑えきれず細い肩を震わせた。

「今更って言われるかも知れないけど…最後にもう一度だけ言わせて。オレは薫が好きだよ。今でも好きだ…。だから今だけ…嘘でもいいから…オレの事、好きだって言って。」

「嘘なんてつけないよ…。」

「うん…わかってる…。」

「志信が好き…。大好き…。今だけなんて言わないで…ずっと、志信が好きって、言わせてよ…。」

「ホントに…?」

「志信じゃなきゃダメなの。好きだから…最後なんて言わないで、ずっと、薫が好きだって言って…。」

志信は薫の涙を指先で拭って、頬を両手で包んだ。

「薫…好きだよ。これからもずっと、薫を好きでいていいかな…。」

薫は志信の涙を指先でそっと拭って笑った。

「うん…!」

二人はきつく抱きしめ合って、微笑みながら愛しそうに唇を重ねた。



その夜二人は、離れていた時間を取り戻すように、お互いの温もりを求め合った。

心と体を重ね合い確かめ合ったお互いの気持ちを、もう2度と離さないと心に誓った。

そして、片時も離れる事を惜しむように、しっかりと抱き合って眠った。





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