ずっと、君に恋していいですか?
「酢豚は卯月さんの得意料理なんですよ。すっごく美味しいんです!ね、笠松さん。」

「うん、まぁ…。」

梨花に図星を指され、志信は少し照れ臭そうにトンカツを口に運んだ。

「なるほどな。」

「笠松…ガッチリ胃袋つかまれてんな。」

石田と前川のなんとも言えない視線を感じて、志信は思わず下を向いた。

「卯月さんはホントに料理が上手なんですよね。今度、教えてもらおうかな。」

「花嫁修行?」

志信が尋ねると、梨花はニコニコ笑ってうなずいた。

(長野さん、幸せそうだな…。)

結婚を来年の春に控えて、梨花は週一で料理教室に通い、自宅でも苦手な料理に挑戦していると、昨日石田がちゃんこ鍋を食べながら言っていた。

「あ、そうだ。今日の朝、始業前に青木部長から聞いてきました。」

レディースセットのオムライスを無言で頬張っていたありさが、口元にケチャップをつけたままで志信の方を向いた。

「ありさ、ここにケチャップついてる。」

前川が口元を指差しながら紙ナプキンを差し出すと、ありさは慌ててそれを受け取り、口元のケチャップを拭った。


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