ずっと、君に恋していいですか?
翌日の昼休み。

志信はたくさんの社員で賑わう社員食堂で、ぼんやりしながら今日の日替わり定食の酢豚を口に運んでいた。

(はぁ…。まずくはないんだけどな。いや、美味いよ?確かに美味いんだけどさ…。)

酢豚は薫の得意料理だ。

薫と付き合う前は、その辺の中華屋の酢豚より社員食堂の酢豚の方が美味しいと思っていたはずなのに、今の志信にとっては、薫の作った酢豚に勝る酢豚はない。

(薫の作った酢豚食いてぇ…。今日の晩飯、酢豚にしてもらおう。)

モソモソと口を動かし、なかなか箸の進まない志信の様子に、前川が怪訝な顔をする。

「笠松、食欲ないのか?」

「うーん、そういうわけでは。」

「ならどうした?オマエ、社食の酢豚好きだったじゃん。」

「そうなんですけどね…。なんというか…前ほど美味しくない。」

「要らないなら食ってやろうか?」

「食べますか?」

志信が食べかけの酢豚を差し出すと、前川はそれを受け取り、代わりに自分の皿から志信の御飯の上にトンカツを二切れ乗せた。

「もっといるか?」

「いや、これで。」

「じゃあ、僕の唐揚げどうぞ。前川さん、僕にも酢豚少し下さい。」

三井も同じように、自分の唐揚げを志信の御飯の上に乗せた。

そんな様子を石田は横目で見ている。

「女子か、オマエら…。」

石田の一言に、梨花、ありさ、美咲の3人が思わず吹き出した。


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