流れ星スペシャル
次の日、事件が起こった。
夕方出勤すると、ユースケがひとりで柱に貼りついて、厨房の様子をうかがっている。
オレが来たことに気がつくと、ユースケはちぎれんばかりに手を振って『おいでおいで』をしてみせた。
「どしたん?」
側へ行って声をかける。
「今日はいつもの100倍くらい不穏な空気が漂ってるんス。西条さん、やたらしつこくて……」
そうささやくユースケの横に貼りついて、厨房に目を向ける。
ドリンクを作るステンレスの調理台の前で、西条さんと桂木さんが向き合って立っていた。
「だから、お前にはムリやねん!」
「サラリーマンの腰かけに飲食の店長が務まるか!」
「お前なんかを店長にしたら『流れ星』の名が地に落ちる!」
ポンポンと西条さんの怒声が飛ぶ。
「すみません。流れ星の名前を傷つけないように、精一杯努力します!」
桂木さんは直立の体勢から腰を折り、深々と頭を下げていた。
それからその姿勢のまま、大声をあげる。
「でも、ボクはサラリーマンの腰かけではありません!」
…………。
「あ? お前オレに口答えすんのか、このタヌキ」
そこで西条さんは、ガツッと桂木さんのスネを蹴った。