流れ星スペシャル
あの頃オレは仕込みからフルで入っていたから、食材を刻んだりスープをとったりしながら、社長と店長の話をよく聞いていたんだ。
『横内くん、来てくれたお客様が、全員笑顔で帰れるような店を作ろう』
『がんばって2号店3号店と出して、その先に何かおもろいことをしような』
打ち合わせの締めくくりに、社長はいつもそう言ってうれしそうに笑った。
うん、子供みたいな笑顔で。
だから、オレは……。
そーやな、オレはあの笑顔を見ているうちに、自分の中の気持ちが定まっていった気がする。
社長の頭の中に広がる夢が、いつのまにか自分の密かな目標となった。
将来会社が、2号店3号店と店を広げるときが来たら、オレもそのうちの一つを任されるようになりたいとか、
そーしたらオレの店は、他のどこよりもいい店にするんだとか、
ガラにもなく、そーんなことを想像しながら、オレはキャベツを刻んでいた。