ウサギとカメの物語
6 ウサギの誕生日と、カメのアイス。


「ハッピーバースデー!27歳おめでとう、コズ~!」


会って一番、開口一番、奈々の明るい声が私の耳をつんざいた。


駅前東口の一般車用ロータリーで待ち合わせしていたため、周りの人たちの注目を一手に集める。
あらあの人お誕生日なのね、って感じの視線が私に集中しているのを痛いくらいに感じた。


「ちょっとぉ、どうしてこんな所でさぁ」

「すぐ伝えたかったんだもん。ケーキも買ってきたんだよ!夜、部屋で食べようね~」


ボストンバッグとは別に、小さな箱を持っている奈々。
有名な洋菓子店のケーキだ。
現金だけど単純に嬉しくなって笑みがこぼれた。


「ありがとう」


私が素直にそう言ったのに、奈々はふざけ半分といった口調で


「だって私がお祝いしてあげなきゃ、コズ一人ぼっちだもんね?」


なんて笑ってきた。


否定は出来ないけど悔しい。
そういう自分だって夏に誕生日を迎えた時、私と2人で飲んでたじゃない!


12月の1週目の土曜日。
私と奈々は、社員旅行を兼ねた忘年会という会社の一大イベントに向けて、舞台となる温泉にこれから出発するのだ。


なので、たとえ一泊とはいえ女子ですから。
それなりに荷物が増えてしまって。
私たちの手にはまぁまぁな大きさのボストンバッグがお互いに握られていた。
言い訳させてもらえるなら、私はこっそり焼酎と大量のおつまみをバッグに忍ばせていた。
今夜の宴会後、奈々と2人で部屋で飲み明かすため。


私たちはいつも一緒の2人部屋で、毎年恒例で2人で持ち込んだお酒を飲みまくって酔っ払って夜を明かす。
それが楽しくて参加しているようなものだ。


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