Memories of Fire
「こ、こ……っ」
「子? え、もしかして今日タイミングいい? もう一回しとく? 今度はもう少し長く――」
「この、無神経男!!!!!」

 バチーン、と豪快な音が部屋に響く。

「いった――」
「最低! 最悪! バカ、アホ!!」

 マリーがエルマーを罵倒するたびに、彼女の手から業火が放たれた。エルマーは慌ててベッドを降り、少しずつ扉へ追い詰められていく。

「マ、マリー、落ち着いて――」
「出てってちょうだい!」

 挙句の果てには、マリーに扉の外へ放り出された。

「え、ちょっと待って! 俺、服が――!」

 ガン、と乱暴に扉を閉め、鍵を掛けた後に魔法での施錠もする。マリーは憤慨しながらベッドへ戻り、シーツを被った。

 エルマーが外から「俺たち結婚するよね?」とか「子供ほしいって話してたじゃん」とか叫んでいるらしい声もこもって聞こえてくるが、すべて無視した。

 俺たち、やっと結婚するでしょー?――確かに二人はそういう約束をしていた。けれど、それは恋人として過ごす時間の中で将来を語っていたものである。

 ソフィーとクラウスの婚約話が進み始め、次はマリーとエルマーなのも事実だし、二人もそれを喜んでいた。

 だからといって!

 いきなり子作りの話とは何事か! それも、まだ正式なプロポーズさえしてもらっていないのに、今日も飲んでない? 

 いくらなんでも軽すぎる!
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