Memories of Fire
 翌朝。

「ハンナ……おい、ハンナ」
「んん、もう少し……」
「もう昼だ」

 ぐったりしたまま起き上がれないハンナを見て、ベッドの端に座ったジークベルトはため息をつく。

「俺の言っている意味がわかっただろう」
「うぅ……」

 YESというのが悔しくて、ハンナは毛布に顔を隠す。

 百聞は一見にしかず、というかなんというか、経験しなければわからないこともあるのだと改めて知った気がする。

 何より、長い婚約期間、ここまで我慢していたジークベルトの忍耐と真面目さには、感服した。

「わかったなら、食事はきちんとしてくれ……昨日は、その、俺も悪かったよ。これからは、手加減するから」
「……しなくていいわよ」

 バツが悪そうなジークベルトに、ハンナは毛布越しに小さくもごもご呟いて、鼻の辺りまで顔を出す。

「ちゃんと、食べるから……毎日、会いに来て……」

 そう言うと、ジークベルトは一瞬ポカンとした表情になったけれど、すぐにフッと眉を下げて笑った。

「仰せのままに……お姫様」

 そして、ハンナの顔の横に手をついて屈みこむ。

 優しくて温かい唇が、ハンナのおでこにくっついて、ちゅっと音を立てた――
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