Memories of Fire
「い、言ってくれたら……良かったのに」

 しばらくお互いに赤くなりながらもじもじしていたが、やがてハンナは小さく声を出した。

「私……壊れたりしないわ。ジーク、いつも遠慮がちで……私だって、足りない……」

 いつも自分から誘うくせに、こういうことを告白するのは恥ずかしい。しかし、言ってしまったものは取り戻せない。ハンナはごくりと唾を飲み込んで、身を乗り出した。

「ハ、ハンナ、お、お前、どこ触って――」
「待てないの!」
「ん!?」

 慌てているジークベルトの唇に、ハンナは自分のそれを押し付けた。ぺろりと彼の柔らかな唇を舐め、温かな口内へ舌を差し込む。

「ん……お、おい……ハンナっ」

 ジークベルトの手に力がこもり、ハンナの肩を押してくる。

「何よ……嫌なの?」
「……そうじゃない」

 ジークベルトは肩で息をしつつ、ハンナの手を引っ張ってソファに座らせる。ジークベルトに背を向ける体勢、そして彼がジッパーを降ろし、ドレスを肩から落とした。

「ほら、手……通して……」
「何よ、子供扱いなんだから……」

 ジークベルトの言い方に、ハンナがむくれると、後ろで彼がはぁっとため息をつく。それから彼の体温が近くなり、露になった膨らみを大きな手で包み込まれた。

「あっ……」
「これが、子供扱いなのか?」

 ゆったりとささやかな膨らみを揺らされ、ハンナは身を捩る。

「違う、けど……でも……小さいし……」
「そうか? 十分、柔らかいけどな……」
「あ、ジーク……」
「……一回じゃ、済まないからな」

 色っぽく掠れた声で耳に落とされた囁き――結局、その夜、ハンナは意識が飛ぶほど抱き潰されることになってしまった。
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