許嫁な二人
(1)

 裏口からそろっと体を半分だしたところで



   「透! 道場の掃除はどうした!」



 とそう怒鳴られて、透は首をすくめた。

 振り返ると、祖父の巌が腕組みし、口をへの字にまげてこちらを
 見ている。

 その顔をみて、透は脱走をあきらめた。



   「わかったよ、、、。」



 口の中だけで、もごもご呟いて踵をかえす。



   「学校に行く途中で、碓氷神社にもちゃんと寄るんだぞ
    さぼるな!」



 とぼとぼと家の中へもどる透の背中に、再び巌のきびしい声がとんだ。
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