許嫁な二人

   「どうしたの、唯ちゃん、目、真っ赤よ。」



 朝、千賀子にあうなりそう言われた。



   「あー、昨日おそくまで本を読んでたから、そのせいかな。」



 下手な嘘だけど、本当のことは言えない。

 唯はごまかして笑ってみせた。





 透から言われた言葉は、ずっと唯がほしかった言葉だった。

 でも、どうしてそれが今なのか。

 ただ、聞き流していた ”碓氷の姫” という言葉の重みは年々増し、
 父親の病気がわかってからは、唯を縛り付けるモノになった。

 結婚して、神社を継ぐときめたばかりなのに、、、。

 透の言葉で唯の心は乱され、唯を苦しめる。



 

  



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