許嫁な二人

   「大丈夫かしら。」



 千賀子のつぶやきに千賀子の夫であり、この神社の神主である
 誉は妻をみる。



   「どうかしたのか?」



 千賀子の見つめる先には、唯がいる。



   「由緒ある神社なんてクソ喰らえよね。」



 突然、千賀子が大声をだして、誉は飲みかけていたお茶を吹き出した。



   「なんだいったい、、、そういう神社の跡取りのところに
    嫁にきたのは自分だろうが、、、。」

   「ええ、私はいいのよ、好きな人のところへ来れたんだから、、
    でも、唯ちゃんは、、、。」



 そういわれて、誉は巫女の姿で参道を掃き清めている唯をみる。



   「本当にクソ喰らえだわ。」



 もう一度、千賀子のつぶやく声が誉の背中越しに聞こえた。
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