許嫁な二人

   「透ちゃん、また柴坂につかまってたの?」



 亮平だった。



   「ね、ね、そんなことよりさ、、、。」



 亮平は透が返事をしようがしまいが関係なく、興奮した様子で
 喋り始める。



   「この間言ってた転校生が、もうすぐ向こうから
    歩いてくるからさ、透ちゃん、ご対面してよ。」



 そう言って、透の肩を押しながら歩き始める。



   「ほら、あの髪の毛を耳のところで二つに分けてしばってる
    子のとなりのセミロングの子。」



 見るともなく言われた方に目をむけて、その女の子を認めた途端
 透はまわりの景色が目に入らなくなった。



 黒い艶のある肩先までの髪、白い頬にぷっくりとふくれたような
 赤いくちびる、、、。

 隣の女の子の方をむき、透の方へ顔をむけず、
 彼女は通りすぎていった。



   「な、な、かわいいだろう?一見の価値ありだろう?」

   「、、、、名前、、、。」

   「は?」

   「、、、名前は?今の彼女。」

   「え、あぁ。碓氷 唯。」
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