許嫁な二人

 まじめそうな返事や、気のなさそうな返事、眠そうな返事
 いろいろな返事がかえっていく。



    「7番、瀬戸。」



 担任の先生がそう呼んだのに、返っていく返事はなかった。



   「瀬戸!いないのか!しょうがないな、また遅刻か。」



 瀬戸と呼ばれた名字に唯の意識は細やかになる。

 でも、それが透であるはずはなくて、、、。

 それにしてもクラスがはじまってまだ一日目なのに、もう
 遅刻なんてすごい、、と唯が思った時だった。

 ガラっと勢い良く教室の扉があいて、背の高い男子生徒がぬっと
 教室に入ってきた。



   「やっときたか、顔はちゃんと洗ってきたか。」



 担任の先生の声にクラスのみんなは笑ったけれど、遅れてきた
 その人はにこりともせず、空いている自分の席をみつけて
 座っただけだった。



   「明日からは遅刻なしだぞ、いいか。」



 先生がそう言っているのに、返事もしない。



   「わかったか、瀬戸 透!」



 最後にとうとう、先生は大きな声をだした。

 その大きな声で呼ばれた名前に、唯はびくりと肩をふるわせた。

 これ以上は無理というほど大きく目を見開いて、無表情で
 座っている男子生徒を見る。


  (透、、くん?)
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