雨のようなひとだった。
恋をすれば夢中になれる。
本気で夢中になることが出来れば、気付かないふりをしたまま次へと進んでいけると思っていた。
(……でも今は違う)
添えられているだけの手をグッと握りしめてみる。
反射的にびくりと一瞬震えて俺の手から自身の手を引き抜こうとした彼女を見遣り、手を開いて指を絡め、改めて握りしめた。
彼女の顔を見ることはまだ出来ない。
歩く速度が少しだけ遅れたが、それでも彼女は俺にされるがまま後ろをついてきていた。
振り払おうと思えば出来るはずだ。
俺は彼女に癒されて焦がれていると言いながらどこかで利用していた。
だから彼女が俺を利用していたとしても、利用する価値が俺にあるならそれでいい。
俺も彼女もいい年をした大人だから狡くて弱くて、だからきっと近付きあった。