叶ったはずの恋。
思い出探検2
あたしは1人で校舎の中へ入った。
大ちゃんを連れてどこかへ行ってしまった陽菜を探す気はない。
だって、めんどくさいし
廊下の窓からグラウンドを見つめる。
どうしてだかグラウンドにあの頃のあたしたちが見えるよ。
汗流して、泥まみれになって、
毎日バカみたいに練習して、
毎日バカみたいに笑ってた。
あのグラウンドの端にあるベンチ
ときには陽菜と。
ときには大ちゃんと。
ときには桐ちゃんと肩を並べて座った場所。
あのベンチで桐ちゃんの別れ話を聞いたんだっけ?
泣いたあとみたいな顔して学校に来て、
自分では一生懸命笑ってたみたいだけど、
全然笑えてなくて。
あたしに彼女の話してるときの顔、
最高に切なかった。
聞いてるこっちまで胸が苦しくなるくらいね。
『彼女のこと…すっげぇ好きだったんだ』
って、聞いたあと尋常じゃないくらい辛かった。
これが恋の辛さなんだ、って初めて知った。
桐ちゃんと距離が縮まったのも、
恋の辛さを知ったのも、
あの、ベンチだった。