悪魔な君に恋をして





『愛、も、やばい。俺っ………』




視点の合わない黒澤くんは
必死に私を見ようと見つめてくる。



『んしょっ』




私は黒澤くんを抱き起こした。


制服の上からでも伝わってくる
黒澤くんの熱は熱い。


首にかかる黒澤くんが吐く息も
同じくらい熱かった。




『ごめんね、美雨ちゃん。私、帰るね!』


『一人で大丈夫??』


『大丈夫!ほんとごめん!じゃあね!』




私はズルズルと黒澤くんを抱き抱えながら、
もう暗くなってきてる外に出た。




『カーッカーッ!』



歩いているとさっきまでゴミをあさっていた
カラスが何故か付いてくる。



これも黒澤くんが悪魔だからかな、?





私は付いてくるカラスを放って
ひたすら歩き、草原がある川沿いに
黒澤くんを寝かせた。




『んっ…ひっく…』



顔が真っ赤の黒澤くんは
しゃっくりをしながら、私に擦り寄ってきた。



『ごめん、愛…っく…』




さっきよりも深く赤に染まった瞳は
あの日見た黒澤くんの瞳と同じ。




空はもう夕日を隠して、
代わりに大きくて眩しいほどの満月を掲げた。




コウモリも姿を現して
不気味に私達の周りを飛び回る。



そしたら急に黒澤くんは
ゆっくり満月に手をかざした。



その瞬間、満月がポぅっと一瞬光を
増し、黒澤くんの体からは赤いオーラの
ような光が体から出ている。



赤い光が出るにつれて、黒澤くんの酔いが
冷めていってる気がした。



黒澤くんはしばらくして月に手をかざすのを
やめ、私の頬に手を当てた。



さっきまでの黒澤くんとは違い、
手は氷のように冷たい。



『愛、俺のこと、どう思ってるの?』




黒澤くんが急にそんな事を質問してくると、
どこからやってきたのか真っ黒いアゲハ蝶が
黒澤くんの肩の上に止まった。




『黒澤くんの事、好きだよ。』



紛れも無く、本心。



でもこの好きは愛じゃなくて
人間の姿をした黒澤くんも
悪魔の姿をした黒澤くんも
どっちも好きだよっていう意味。


なんだか愛の意味での好きを口に出したら
黒澤くんがどこかに行っちゃいそうで
怖かった。




『俺も愛のこと好きだよ。
でも、俺達は世界で一番切ないかもね。』



『……。』



それがどういう意味かはすぐには
気付けなかった。



でもなんとなく分かった。





私の恋は叶ってはいけない恋って事が。




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