Time Paradox
ニコラスが居なくなった部屋で、イザベラは手慣れたメイドに着せ替えられていた。

二人がかりでパニエを履かせ、ドレスを着せるのもそう時間はかからなかった。

「失礼します。」

イザベラがぼんやりしているうちに、メイドと入れ違いでニコラスが部屋に入ってくる。

てっぺんからつま先まで目線を上下させるニコラスに、イザベラは恥ずかしくなったのか下を向いてしまった。

「やっぱりな…俺の思った通りだ!」

ニコラスは嬉しそうに両手でイザベラの頬を包み、上を向かせる。

「断然こっちの方が似合うよ、可愛い。」

イザベラは一気に顔が熱くなるのを感じたが、そう言った次の瞬間、ニコラスは抱き寄せて囁いた。

「…まぁ、2割くらい俺の好みも入ってるんだけどね。」

「そうやって…騙されないわよ。」

イザベラがまた警戒心を見せる。

「…少しは信用してくれよぉ!」

ニコラスは彼女を胸板から離し、顔を覗き込んで言った。

「遊び人なんだから、信用できないわ!…他の女にも同じようにしてるんでしょ?」

「いや、イザベラさんだけだよ。だって、あそこまで似合わないドレスを着てて惜しい女なんていなかったからさ。みんな自分に似合う物を着て…俺を待ってるだけだから面白くないんだ。」

イザベラはニコラスのナルシスト発言にももう慣れたのか、突っ込みを入れるまでもなくなっていた。

「それでさ…今俺がしたことって、イザベラさんの為になれたかな?迷惑だったりしない?」

意外にも少し不安げに覗き込むニコラスの表情は本気のようだ。

彼のその態度に、イザベラは感激したのか思いっきり抱きついた。

「もう十分よ!本当にありがとう!」
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