Time Paradox

逃亡の先

次の日、まだ眠い目を擦りながら体を起こすと、冷えた部屋にほんのり暖かい朝陽が差し込んでいる。

時計を見るともうすでに朝の7時を過ぎていて、日の短さが冬の始まりを感じさせた。

イザベラが起こしに来てくれるはずなのだが、緊張からか予定の時刻よりも早く起きてしまったリリアーナは、体温で温まった布団をより身体にきつく巻きつけた。

だがしばらくして、そっとドアをノックする音が聞こえ、イザベラが顔をのぞかせた。

「…リリアーナ様、着替えはまだ終わっていないのですね。」

イザベラはそう言って部屋に入ると、クローゼットを開けた。

早く着替えをしろということらしい。

リリアーナは渋々布団から出て寒さに身震いをした。

「…朝一のこの寒さは魔法でどうにかならないのかしらね?」

「暖炉に火をつけるのだって一度目を覚まさないといけないですわ。寝ている間に勝手につけられるような魔法でもあればいいのだけれど…」

「発達した人間界にならあってもおかしくないわよね、そういうの。タイマーっていうのかしら?」

リリアーナはそう言いながら、水色のワンピースを手に取った。

イザベラは着替えを手伝ったが、なにやらキュロット状のペチコートやストッキングなどをリリアーナに履かせ、ワンピースを着せた上にコートまで重ねた。

「…ここまで防寒が必要だなんて、私を森の中にでも隠すつもりなの?」

イザベラは笑いながら首を振ると、部屋のドアをそっと開け、急いでリリアーナの手を引いた。


誰にも見られないよう急ぎ足で部屋を後にすると、辿り着いたのは意外にも中庭だった。


「…ここの茂みになんて隠れたところで、探しに来た衛兵の目は盗めないわ。」

そう言うリリアーナには構わず、中庭の中をずんずんと歩いていく。

「…隠れるのは茂みなんかじゃありませんわ。少し次元のずれた世界に行っていただくんですの。」

そう言ってイザベラは井戸の前で足を止め、笑みを浮かべた顔をリリアーナに向けた。
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