Time Paradox
「お気付きですか、ハンナ様。」


リリアーナは目を覚ますと、駅のベンチに横たわっていた。

朝早いのか、辺りには霧が立ち込めていて、2人以外に人は見当たらなかった。

あれから記憶が一気に流れ込み、気を失っていたようだ。


「大丈夫よ、ありがとう…」

「ハンナ様、決してあの城に近付いてはなりませんよ。それから、ハンナ様を狙う者にも警戒なさってください。ハンナ様はこの街ではお尋ね者扱いですから。」

「気をつけるわ。でも私、まだ気持ちの整理がついてなくて…記憶も混乱してるみたいなの。リリアーナって言うのは…」

「ハンナ様が人間界…すなわちルッケルンガルにいた頃の偽名です。」

「じゃあハンナって言うのが本当の名前なのね。」

「はい。」

「…私、これからどうしたらいい?」

「この国を魔の手から守る為にも、国王と王妃様をお助けください。」

「だって、お父様もお母様ももうこの世にはいないのよ?」

リリアーナは掠れた声で訴えた。


「やり方はあの絵本にも書いたはずです。…まだ間に合います、ハンナ様が生きいる限りは。」

そう言って老人は姿を消した。
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