Time Paradox
リリアーナはデイジーに教えられたベットメイキングと片付けをしながら各部屋を廻っていた。

「…みんな案外綺麗にしてるのね。」

ベットの上の布団は綺麗に畳まれていて、作業はしやすかった。

だがイザベラの部屋のテーブルの上を見ると、朝配達されたばかりの新聞が置かれているのが目に入った。

大きな見出しには“姿を消した!スキャンダラス王妃の行方とは⁈”などという文字が踊っている。

リリアーナはため息をつくと、四つ折りの新聞を手に取って広げた。


細かい文章を追って読んでいくと、リリアーナの捜索が始まっていることや、居場所の推測などがされていることが分かる。

「アーノルド家へと逃げ込んだ説が有力、か…まさか、ジャックと駆け落ちしただなんて!責任逃れ…たしかにそれは言えてるわね…。」

嫌になったリリアーナは他の記事にも何となく目を通した。

「“ベルモント家、庭に謎の侵入者現る!”全く、そんなこと記事にして面白がる人いるのかしら?
“ローランド家、おしどり夫婦のダブル不倫!”貴族に関してこんなことまで書かれるなんて…恐ろしい。」

リリアーナはぶつぶつと読み上げていたが、貴族達の恋愛事情やプライベートな記事に呆れ、元のテーブルの上で四つ折りにした。


部屋を見渡すと、イザベラのドレッサーにはメイク道具が転がっている。

「きっと準備は入念にしたのよね…」

リリアーナはイザベラのデート相手を想像してニヤついたが、ふとある心配が頭をよぎる。

アーノルド家もかなりの貴族であるため、街中で堂々とデートなどをしても大丈夫なのだろうか。

リリアーナはモヤモヤとしながらイザベラのドレッサーを片付けていた。
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