Time Paradox
それを聞いていたレイラははっとした。

夢を見たわけではないが、似たようなことに心当たりがあったのだ。


幼い頃のレイラはある日、好奇心で家の地下室に続く階段を降り、見慣れない扉を見つけた。

その扉は鉄でできていてかなり頑丈な作りだったが、その日は重い扉が少しだけ開いていた。

そしてまだ小さかったレイラは身体を滑り込ませると、何世代も前からあるような上下横全てが石を積み重ねてできた冷たい空間が広がっていた。

だがその部屋には、
見たこともないような量の紫水晶が、ゴツゴツした床やアーチ状になっている天井など、全方位から自生するように突き出している。

母やエラ、レイラなどの目の色と同じ紫色は、粗く角を残したままだった。

今思えば、鍾乳洞や洞窟などから発掘されるはずの鉱石が、このように普通の屋敷の地下室で自生していること自体がおかしいのだが。


レイラはその紫色の不思議な輝きに手を触れると、一瞬何かが音を立てるくらいの勢いで映像化し始めた。

だが母の叫び声とほぼ同時に紫色の石から引き離されて映像は止まり、それが何でどういうものなのかを理解するほどの情報は入って来ずじまいだった。


レイラはその後両親にこっぴどく叱られ、二度とその紫水晶の地下室は開かれることがなくなった。

その後しばらくして妹が生まれ、エラと名付けられた。

エラは幼い頃からどことなく冷徹で無関心、全てにおいて諦めの色を見せる子供だった。

そしてその妹はレイラことルクレツィアと同じ、深い紫色の瞳を持っていた。
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