Time Paradox
リリアーナが部屋に戻ると、バルコニーのある窓が小さく揺れているのに気が付いた。

よく見ると、手のひらほどの大きさの妖精が必死で窓を叩いているではないか。

「待って、今開けるわ!」

慌てて窓の鍵を回すと、妖精は羽をひらひらとさせながら部屋へと滑り込んできた。

「本っ当!面倒な作りね、お城ってものは!」

「ごめんごめん、最近は寒いしバルコニーに出ないから閉め切ってたわ。」

妖精は何故か部屋の鍵を内側から掛けると、魔法で更に強化した。

「何してるの、さっき入ってきた窓もちゃんと閉めて鍵もかけなさい!」

「え?でもまたすぐ…」

カリカリと余裕のなさそうな妖精を見る限り、一刻も早く閉めたほうが良さそうだ。

リリアーナが鍵を閉めると、妖精はやっと落ち着いたと言わんばかりにテーブルの上にへたり込んだ。

「あなたのお友達が訪ねてきてきたと思ったら、さっきはあの嫌なピアノの音!どうしてこんな事になるまで放っておいたの?」

「…えっと…お友達って?放っておいたって、何を?私、また何かした?」

リリアーナのきょとんとした顔に呆れ顔の妖精。

「いいわ、あなたがすぐに理解できるようにしてあげるから。絶対に声を出さないように…ついてきて。」

彼女は低めのハスキーボイスで言うと、クローゼットを開けた。
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