Time Paradox
リリアーナは震える両手を布団の中に隠すと、警戒してその男の様子をうかがった。

男は入り口の方からゆっくりと近付いて来ると、機械的な笑顔を向けた。


「リリアーナ様、先ほどは失礼いたしました。連れの者が手荒な真似を…。」

そう言って頭を下げる。

この男はリリアーナが記憶を失くしたままだと思っているようで、リリアーナも騙されているフリをする事にした。


「…いえ、突然の事でびっくりして。」

そう言ってリリアーナは下を向いた。

「申し訳ございません。お詫びの気持ちを込めて、今夜のパーティーにご招待させていただけますでしょうか?」

「…パーティー?」

リリアーナは首を傾げると、男は口角を上げて手を差し出した。

リリアーナはまだ少し震える手を出せずにいると、男はたくさんのドレスが入った扉を開けて言った。

「お好きな物をお召しになってください。」


赤、黄色、ブルーなど、花のような色とりどりのドレスが入っていた。


「…あの、どうして私をこのお屋敷に?」

リリアーナは、やっと水色の瞳を男に向けて尋ねる。

男は扉を閉めると、さっき長身の男が座っていた椅子に腰掛け、話し始めた。


「リリアーナ様の命が狙われています。やや強引ではありましたが、リリアーナ様をお守りするためにも、ここへお連れしたのです。」

「…それは、どうもありがとう。」


男がまた手を差し出すと、手の震えがおさまったリリアーナは、今度こそ手を乗せた。


今は騙された振りをして様子を見よう。
そう思ったからだ。
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