修羅は戯れに拳を振るう
只の男ではなかった。

浅黒い肌、プロレスの道場生達にも負けない巨躯。

その腕も、胸板も、はち切れんばかりの筋肉に覆われている。

恐らくは壮年期のその男は。

「!?」

笑った。

何を言うでもなく、道場生達を見て凶暴な笑みを浮かべる。

その瞬間だった。

道場生達が自身の目を疑い始めたのは。

男が、目の前で巨大化した。

無論そのように見えただけだ。

人間が巨大化などする筈がない。

しかし確かに大きくなったように見えたのだ。

自分達と同等の体格だった筈の目の前の男が、身の丈3メートルはあろうかという、見上げるほどの巨人になったように見えた。

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