季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
不思議な事に、順平と過ごした日々の事は何一つ不満とは思わない。

お金がなくても私に奢られる事は嫌いで、プレゼントも買えなかったとか、外食らしい外食なんてできなかったとか、デートはいつも公園とか私の部屋だったり、映画なんかにも行けなかったけれど、それでも私は幸せだった。

他に何もなくてもいいと思うくらいに、順平の事が好きだった。

好きだった、と言うと過去の話になってしまうけど、今も私の中では順平はあの頃のまま笑っている。

順平の癖も、声も、負けず嫌いな性格も、何もかもあの頃のまま。

私だけが歳を重ね、変わってゆく。

時の流れは無情だ。

あの頃の順平が今の私を見たら、なんと言うだろう?




食事が済んで、あたたかいお茶を飲みながらしばらく話をした。

早苗さんは腕時計をチラッと見て、湯飲みに残っていたお茶を飲み干した。

「もうこんな時間だ。そろそろ出ようか。」

車に乗って、マンションが近付いて来ると、早苗さんは小さくため息をついた。

「一日あっという間だったな…。」

「ホントに早いですよね。」

「それは…朱里も楽しかったと思ってくれてるからって事でいいのかな?」

「楽しかったですよ、すごく。」

「それなら良かった。」

早苗さんの嬉しそうな笑顔を見て、ほんの少し罪悪感を感じた。


同じ時を過ごしている間も、目の前にいる私が壮介や順平の事を考えていたと知ったら、早苗さんはどう思うだろう?




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