季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
壮介は呆然と目を見開いている。

やっぱりまずかったな。

私は慌てて言い訳を考える。

「あ、でもホラ、勘違いかも!!出産予定日はあくまで予定日だってその人も言ってたし!2週間とか遅れて出産って事もあるんだって。」

壮介は眉間にシワを寄せて、冷めきったコーヒーを一口飲んだ。

そして静かに口を開いた。

「うちの子…予定日の1週間前に生まれた。ってかさ…どっちにしても…無理じゃね…?」






カフェを出る時、壮介は肩を落としてため息をついた。

「ごめん…変な事言って。」

「いや…。朱里は悪くない。元はと言えば、朱里を裏切った俺が悪いんだ。」

「壮介は…どうするの?」

「さあな…。これから考える。子供にはなんの罪もないもんな。」

「それは確かにそうだけど…。」

紗耶香は一体誰の子を身籠り、壮介の子として産んだのか。

私たちには皆目見当がつかない。

結局、後味の悪いまま壮介とはカフェの前で別れた。

悪いことしちゃったかな。

知らない方が幸せな事だってある。

紗耶香は志穂を騙して、壮介を騙して、私から壮介を奪い取ったんだ。

紗耶香という人間がまるでわからない。


こんな時になって初めて、壮介が私との結婚をちゃんと考えてくれていたんだとわかった。

壮介はいろんな物を背負う覚悟で、紗耶香との結婚を選んだんだ。

紗耶香の産んだ子が壮介の子ではないなんて、どうか、私の間違いであって欲しい。







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