季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「ああ言えばこう言うね、オマエは。そんなに言うなら、オマエが面倒見てやれば?」

順平は眉間にシワを寄せて、険しい顔をした。

「は?なんで俺が…。」

「そうだ。確かオマエ、同居人探してなかったっけ?部屋空いてんだろ?」

「だからって…。」

「いいじゃん。朱里ちゃんは新しい部屋を借りる余裕はないみたいだし。家賃半分払ってもらえばオマエもラクだろう?」

いやいや、なんでそうなるの?

順平と一緒に暮らすなんて有り得ない。

「あのー…できれば私はここの事務所で…。」

おそるおそるそう言うと、マスターは私の方を向いて笑った。

「そう?朱里ちゃんがそう言うなら構わないんだけどね、俺は。ただ、ひとつ言い忘れてた事があって。」

「なんですか?」

「ここね、たまに出るの。」

「えっ?!」

出るって…出るって、もしや…!!

「朱里ちゃんが平気なら、遠慮なくどうぞ。」


い…い…イヤだ…!!

無理、絶対に無理!!

私はこの世で一番オバケが苦手なんだから!

心霊話を聞いた日の夜は、怖くて怖くて、とても一人ではいられない。

今までは壮介がいたから、夜に一人になる事はほとんどなかった。

私が怖がって抱きついたら、壮介は鬱陶しがってはいたけれど、それでも私が眠るまで、ちゃんと背中をトントンしてくれた。

そんな時もあったのにな。

なんで今更、そんな事を思い出すんだろ。



< 23 / 208 >

この作品をシェア

pagetop