季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「順平、あんまりいじめないでやってくれ。」

「なに?マスター、マジでこの女どうにかしちゃおうとか思ってる?」

「思ってないよ。純粋な人助けだ。」

この女って何よ。

どうにかってなんだよ。

しかし順平はいつの間にこんなに最低な男になったんだろう?

昔はこんなひどい事は言わなかったのに。

「ほっときゃいいのに。マスターは人が好すぎるんだよ。」

「朱里ちゃんを助けたのは順平だろ?」

「この店がいかがわしい店だって、他の客に誤解されたらどうすんだよ。こいつを助けたかったわけじゃない。こいつは自分の意思でついて行こうとしてたんだからな。」

順平はグラスを洗いながら舌打ちをした。

これ以上関わりたくなかったのに、私が新しい部屋を借りられるまで、何度も顔を合わせなくちゃならないって事か。

お金貯めて早く部屋借りなきゃ。

今度の仕事は、多少きつくても時給の高い職場を紹介してもらおう。

「とりあえずだ。朱里ちゃん今日からしばらく事務所で寝泊まりする事になったから。その間は店の手伝いしてもらう。」

「俺一人でじゅうぶんだろ。かえって邪魔になるんじゃねぇの?それにこんなやつ信用して大丈夫なのか?朝になったら金でも盗んでバックレてるかも知れないのに。」

ホントにいちいち失礼だ。

人を泥棒呼ばわりしくさって。

ホントに腹が立つ。

昔とは別人みたいだ。

昔の順平はもっと素直でかわいかった。


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