季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
悔しいけど、ここにしばらく厄介になる以上、順平に従うしかない。

しかも酔っていたとは言え、見知らぬ男に連れて行かれそうになっていたところを助けられたわけだから、何も言い返せない。

ここにいる間、順平にボロカスに言われるのだろう。

早くお金を貯めてここを出て行こう。

与えられた部屋の電気をつけて、荷物を運び込んだ。

そうだ、布団がない。

私はどうやって寝ればいいの?

固くて冷たい床に転がって、コートか何かを被って寝るしかないのか。

悲しすぎる。

厳しいな、現実は。

だからといって事務所に戻る勇気もない。

「オイ。」

引き戸の向こうで、順平が大声を上げている。

「ここ開けろ。」

何事かとドアを開けると、順平が布団を抱えて立っていた。

「仕方ねぇから貸してやる。汚すなよ。」

「いいの?」

「いいのも何も、今から布団買いには行けないだろ。要らねぇなら貸さねぇぞ。」

順平は布団を抱えて部屋に戻ろうとした。

「かっ、貸して下さい!!」

私は悪魔に支配された子羊か。

素直に従う私の態度に、順平は満足そうだ。

「わかってきたじゃん。」

部屋の隅に布団を運び入れると、順平はさっさと部屋に戻って行った。


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