季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「鬱陶しいから、そこにボサッと突っ立ってんな。あっちの部屋使え。」

順平は私の方を見もしないで、その部屋を指差した。

部屋の中には何もなくがらんとしていて、暗闇だけが広がっている。

同居人を探していたという事は、前に別の同居人がここに住んでいたのだろう。

もしかして別れた彼女だったりして。

「絶対俺の部屋には入るな。キッチンは好きに使っていいけど、片付けだけはちゃんとしろ。あと、風呂はあっち。あんま好き勝手にゴチャゴチャ物増やすなよ。」

「うん…。あの…ここの家賃とか共益費はいくら?私は月いくら払えばいいかな…。」

私が尋ねると、順平はやっと私の方を見た。

「家賃12万、共益費7千円。とりあえず5万でいい。」

「えっ…でも…。」

「どうせ金ねぇんだろ?その代わり掃除とか洗濯とか、家事はオマエがやれ。」

「食事は?」

「朝は適当に買ってきて食うし、昼と晩はほとんど外で済ませるから、俺の分は作らなくていい。」

「わかった。」

なんだ、この不可思議なやり取りは。

だけど成り行きとはいえ一緒に暮らす事になったんだから、ルールは必要だ。

最初にきっちりしておかないと。

「あ…あと、男連れ込むなよ。そういう事は外でやれ。」

「つ、連れ込まないよ!!」

「どうだかな…。いくら寂しくても、俺の寝込み襲うなよ。」

「んなっ…!!」

襲うかー!!それはこっちの台詞だ!

順平はニヤリと笑って、シャツを脱ぎながら自分の部屋に入って行った。



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