季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
待て待て、ちょっと待て。

それって俗に言う…。

「もしかして…セフレ?」

「そんないいもんでもねぇ。会いたいってしつこいから会って、本人の希望通りホテル行ってやっただけなんだけど。」

「…最低…。もういいわ。」


お風呂から上がって、床に就いた。

目を閉じてぼんやりと考える。


恵梨奈、やっぱり遊ばれて勘違いしてた。

恋をすると女は、男の美しいところだけを見ようとするものなのかもね。

例えば悪魔のように整った顔立ちとか?

私は…どうだったっけ?

確かに順平は誰が見てもイケメンなんだと思うけど、私が惹かれたのはそこじゃなかった。

少なくとも昔の順平はこんな男ではなかった。

昔の順平と今ここにいる順平は別人だ。

私だって、純粋に人を好きになれたあの頃の私とは違う。


私は壮介のどこが好きだったんだろう?

順平みたいにわかりやすい美形でもない。

どこにでもいそうな普通の男だ。

特別優しいとか、ものすごく面白いとか、めちゃくちゃ仕事が出来るとか、何かが突出していたわけでもない。

極々平凡な、普通の会社員だと思う。

だからなのかな。

無理して合わせようとしたり、高い理想を追いかけたりしなくて済んだ。

この人となら、平凡で普通の暮らしが出来ると思ってた。

当たり前のように、空気みたいにずっと一緒にいてくれると思った。

考えれば考えるほど、壮介を“結婚相手”としか思っていなかった自分に気付く。



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