季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「それに男だって好きな女には、着て見せて欲しいって思うような服の一枚くらいはプレゼントするもんだろ。」

「…そうなの?」

壮介から洋服やアクセサリーをプレゼントされた事なんてないなと、今更気付く。

私がどんなに着飾ったとしても、壮介はきっと私になんて、興味がなかったんだろう。


順平からは一度だけ、誕生日でもなんでもない日に、私に似合いそうだったからと、ネックレスをプレゼントされた事があった。

そんなに高いものではなかったかも知れないけど、バイトと劇団の活動を掛け持ちしていつもお金のなかった順平が、私のためにそうしてくれた事が嬉しかったのを覚えている。

そういえばあのネックレス、どうしたっけ。


「さっさと運んで終わらせようぜ。」

「あ、うん。そうだね。」

荷物を運ぼうと立ち上がった時、順平は壮介の目の前で私を抱き寄せた。

不意を突かれて、私は順平のなすがままになっている。

「これが済んだら、服買いに行こう。オマエに似合う服、買ってやる。これからは俺がオマエをいい女にしてやるからな。」

順平は自信たっぷりに笑みを浮かべて、呆気に取られた私の頬に軽くキスをした。

何言ってんの…?!

ってか、恥ずかしいんだけど!!

壮介もポカンとして私と順平を見ている。

順平の彼女のふりって、ここで必要?

むしろ順平が私の彼氏のふりしてるって、なんかおかしくないか?



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