夏 恋 花 火

学校から家までは、歩いて15分くらいだ。

つまり、アイツの家までも同じ。


家から近いからって理由で入ったか、って言われたら

そうとも言えるし、そういうわけじゃないとも言える。



石ころを蹴飛ばしながら、とぼとぼ歩いていると、後ろから声をかけられた。


「ようよう、おじょうさん。今、帰り~?」


俊也だった。

下手なナンパかっつーの!

本当に犬みたいに、私の右に行ったり左に行ったりして、へらへら笑っている。


「話しかけないで!それに暑いから、あんまくっつかない!」

「んだよ、まだ怒ってんのかよ」

「別にっ?ていうか、あんた部活は?」

「今日は休み。あ!」



俊也が足を止めた。

見ていたのは、壁に貼ってある花火大会のポスター。



「そっか。もうすぐ花火大会かぁー」

「あんた、誰か行く人いんの?」

「俺?まだ決まってないけど。あー、でも後輩の女の子に誘われた。先輩っ大好きです、一緒に花火大会行ってくださいっ!て」



あっそう、ていうのも面倒で、私はスタスタ歩き出した。

何だ、俊也って、結構モテるんだ?


石ころをまた蹴飛ばした。

その石ころが転がった方を見ると、道端で足を止めて話している人たちがいた。

すぐに目が留まった。

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