思いがけずロマンチック

「すみません、ちょっと考え事してて……」

「考え事? 当ててみようか? 歓迎会の余興のことでしょう?」

「違いますよ、余興の準備はできてますから」


もう歓迎会の準備は整っている。後は当日を迎えるのみだから、今更余興に頭を悩ませることはない。千夏さんにも話したはずなのに、もう忘れてしまったのか?


「もう決まってるの? それで、何歌うの?」

「え?」


歌うなんて誰も聞いてない。
余興はビンゴ大会のみ、他には有田さんと各課の課長からの挨拶を入れながら歓談の予定。歌ったり踊ったりするのは忘年会のために取っておこうということになったから。


「当日のお楽しみにするつもり? こっそり教えてよ」

「ちょっと待ってください、誰も歌いませんって言ったじゃないですか……誰がそんなことを?」

「莉子ちゃんが歌うって、さっき届いた案内メールに追記されてたよ」


私は案内メールなんて送信していない。最終確認は前日の朝に送信するつもりで下書きを済ませて保存してある。
私のほかに歓迎会に関わってるのは益子課長しかいない。


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