思いがけずロマンチック

「千夏さん、今からそちらに行きます、待っててください」

「え? いいよ、来なくていいから」

「行きます、ちょうど今駅にいるので待たせませんから」

「だめだよ、もう遅いから……本当に何にもないから、ね」


千夏さんの声は焦りを含んでずいぶん大きくなったけれど、それだけじゃ解決にならない。何があったのか知りたいし、私は千夏さんの力になりたい。


「千夏さん、お願いします、何があったのか話してください」


自分の気持ちを言葉に込めて、全力で訴えた。これでも話してくれないのなら、すぐに電車に飛び乗って千夏さんの元へ向かうと決めて。


千夏さんの返事はない。
また沈黙が押し寄せてくる。


そう思うのと同時に聴こえてきたのは諦めたようなため息。


「莉子ちゃん、ありがとうね……、私ね、別れることにしたの」


予期しなかった余りにも衝撃的な言葉に、何と言って返せばいいのかわからない。だって、千夏さんの口から出てくるべき言葉じゃない。


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