思いがけずロマンチック

私のことは放っておいてよ。どうでもいいことは聞かなくていいし、余計なことも考えなくていいから早く仕事を済ませようよ。

それより、馬鹿って誰に言ってんの? 

平静を装っているのも、そろそろ限界に近い。


「益子課長、私はあと一期分纏めたら終わりますけど、あとどれぐらいですか?」


つい語気が強くなってしまう。
ぱたぱたっと益子課長の指が机の上を掻き鳴らす。


「うん、僕もあと一期分だ」

「だったら、残りは私が済ませておきます。益子課長は先に帰ってください、手伝ってくれてありがとうございました」

「いいんだよ、唐津さんをひとり残して帰るなんて上司としてできないからね」


こっちこそいいんです、要らないんです。むしろ先に帰ってもらった方がせいせいしますから、早く帰ってください。今にも口に出してしまいそうになる。

懸命に堪えながらキーを叩く私の肩に、益子課長の手が載せられた。ぞわっと冷ややかな感覚が背筋を伝う。

< 41 / 228 >

この作品をシェア

pagetop