思いがけずロマンチック
私のことは放っておいてよ。どうでもいいことは聞かなくていいし、余計なことも考えなくていいから早く仕事を済ませようよ。
それより、馬鹿って誰に言ってんの?
平静を装っているのも、そろそろ限界に近い。
「益子課長、私はあと一期分纏めたら終わりますけど、あとどれぐらいですか?」
つい語気が強くなってしまう。
ぱたぱたっと益子課長の指が机の上を掻き鳴らす。
「うん、僕もあと一期分だ」
「だったら、残りは私が済ませておきます。益子課長は先に帰ってください、手伝ってくれてありがとうございました」
「いいんだよ、唐津さんをひとり残して帰るなんて上司としてできないからね」
こっちこそいいんです、要らないんです。むしろ先に帰ってもらった方がせいせいしますから、早く帰ってください。今にも口に出してしまいそうになる。
懸命に堪えながらキーを叩く私の肩に、益子課長の手が載せられた。ぞわっと冷ややかな感覚が背筋を伝う。