思いがけずロマンチック
「つまらない独占欲か? 素直じゃないな」
嫌味っぽい言い方は、まるで私を挑発しているようで黙ってはいられない。
「有田さんには経験ないですか? 自分だけの秘密にしておきたいと思うことぐらいあるでしょう?」
強く言い返したけれど有田さんは無反応。あっという間に逸らした目が、店の屋根から空へと向けられてしまう。
暮れ始めたくすんだ空色に、有田さんの髪の色が溶け込んでいく。
「もちろんある、誰にも触れられたくない気持ちもわかるが、多くの人に認められてこそ価値があるとは思わないか?」
「そうですね……、人気はたくさんの人が評価しなければ築けませんね」
「自分の評価が認められたという証にもなるからな、このイベントの出店が成功したら、もっと客は増えるだろう」
有田さんが振り向いて、念を押すような目で私を見つめる。淡い色に染まっていく景色の中で、有田さんの瞳は鋭く輝いている。
「はい、もちろん成功させます」
決意を込めて答えると、店のドアが開いた。
笠間さんが丁寧にお客さんを見送って、私たちへと振り返る。
「お待たせしました、どうぞお入りください」
迎えてくれたのは、店の雰囲気によく似合った穏やかな笑顔。