思いがけずロマンチック
ようやく企画書が大方の形を成してきたから、ひと息ついて休憩することに。
あと少し頑張ろうと言い聞かせて、うんと両腕を上げて背伸びをしながら休憩室へと足を踏み入れた。こんな時間に誰もいないだろうと思い込んでいたのに、自販機の前に先客がいるらしい。
すると、振り向いたのは有田さん。
慌てて腕を下ろして、「お疲れ様です」と一礼した。ずいぶん前に役員室を出て行ったから本社に向かったのだと思っていたけれど、早々に戻ってきたのだろうか。
「お疲れ様、まだ残ってたのか、企画は順調に進んでいるか?」
顔を上げた私に投げ掛けられた言葉は素っ気なくて、少しも感情なんて感じられない。もちろん表情も然り。
そんなことを、いちいち気にしていたらキリがない。だけど少しぐらい愛想よく話してみてもいいと思う。
「はい、もう少しです。明日中には仕上げられそうなのでチェックをお願いします」
「そうか、早いな……何飲む?」
有田さんが顎を上げるのと同時に、自販機を指差した。そして私が何にも答えないうちにお金を投入して、一歩下がってしまう。
冷たい人だと思ったのに、いいところもあるらしい。