思いがけずロマンチック

笠間さんのお店に着いた時には、すっかり雨は本降りになっていた。

私たちの到着を待っていてくれたらしく、笠間さんはタオルを持って出迎えてくれた。店内のショーケースを覗き込むお客さんを見ながら、奥の事務所へと案内される。


「こんな雨の中、来て頂いてすみませんでした」


物腰柔らかな笠間さんの挨拶から、和やかに本題へと入っていく。ようやく仕上げた企画書を広げて、笠間さんの前へと差し出す。

いざ説明を始めようと、身を乗り出した私の腕を有田さんが突っついた。


「おい、これは古い方じゃないか」

「え?」


思わぬ不意打ちに身を乗り出したまま、企画書を見直して驚いた。これは有田さんの言う通り、古い企画書だ。
ちゃんとファイルに挟んで、バッグに入れたはずだったのに。いつの間に、入れ替わってしまったんだろう。


「すみません、すぐに取りに戻ってきます」


笠間さんから企画書を取り上げて、立ち上がった。ここなら今から会社に戻って、新しい企画書を持ってきても一時間もかからない。

前回もページが抜けていた失敗をしてしまったというのに、今回も。私はなんてそそっかしいんだろう。情けなくて悔しくて、涙が出そうになってくる。

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