思いがけずロマンチック
「いいですよ、書類は形だけでしょう? 前回説明して頂きましたし、内容は理解させてもらっています」
笠間さんが救いの言葉をかけてくれるけれど、どうしたらいいのかわからない。考えがまとまらなくて、どんどん混乱していく。
「すみません、本当に……」
ひたすらに頭を下げて、謝ることしかできない。
「唐津さん、また今度届けてくれたらいいから」
笠間さんの声とともに、きゅっと腕を引かれた。引っ張られた方へと振り向くと、隣りには有田さん。立ち上がって険しい顔で、笠間さんに向けて口を開く。
「先日に続き、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
ひと息で言い切って、深々と頭を下げる。私のために謝ってくれたのだと思うと申し訳なくて、私も隣りで頭を下げるしかなかった。
「いいえ、本当に気にしないでください。顔を上げてください」
間もなく有田さんが顔を上げるのが、視界の端に映った。私も恐る恐る顔を上げて、有田さんの様子を窺う。
「すぐに取ってきます」
「いいですよ、次回で……」
「これ以上、ご迷惑をおかけするわけにはいきません」
笠間さんを抑えて、有田さんはすぐさまバッグを取り上げる。私も後に続けと広げた書類を纏め始めた。
ところが、有田さんが私の手を制止する。
「ここで説明を進めていなさい、すぐに戻る」
有田さんは小声で私に告げて、店を飛び出してしまった。