【完】ぎゅっとしててね?
「はー、終わったね」


「手伝ってくれてありがとー。おつかれー」


手と手、ハイタッチ。


ついノリでやったのに、なんかドキドキが残るよね。




教室の後ろのロッカーにもたれて、ふたりでぼーっと、綺麗になった教室を見てたの。



そしたら、



「芙祐ちゃん」



慶太くんがあたしの名前を呼ぶと、まっすぐ目を見つめた。



茶色がかった澄んだ瞳。
優しい顔立ち。いい匂い。



「…な、なに?」


見惚れる前に目、逸らすね。




うん、うそ。
もう見惚れたかも。




慶太くんは、くるりと後ろを向いた。


そして、すぐ背にある後ろの黒板から、短くなった白のチョークを取った。




「らくがき?」



「…芙祐ちゃんもなんか書く?」



「あたしねー、キネィちゃん描くのうまいよ」



緑の黒板にキネィちゃん。できあがり。上出来。



「ぷはっ。へたくそ」



「えぇ?うそ。うまくない?」



「俺が知ってるキネィと違うんだけど」



お腹を抱えて笑う慶太くん。
なんか、なんか。
楽しいから。




もう1つの得意キャラクターも描いちゃうね。



「芙祐ちゃんに描かれるとこんなにひどい有様になるんだね」



肩を震わせて笑ってる、慶太くん。




「ひどーい」





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