【完】ぎゅっとしててね?
慶太くんがチョーク持ったのに、なーんにも描いてない。



あたしの絵に魅了されてる場合じゃないぞ。



あたしがまた1つ落書きをしてたら、
慶太くんが黒板に白いチョークをこすった。



その様子をみてたら、横に一本棒を引いただけで、やめちゃった。




「…あんま見ないでよ」


「あたしの絵を見た後で照れることないよ」



「…ははっ」



笑いながら、続きを書き始めた。




ひらがなの、"す"


一旦、チョークが止まった。


「…す?」


また動き出す、白いチョークを握る指先。



ひらがなの、"き"



黒板に残った
……"す き"の文字。




慶太くんは、カランとチョークを落とすと



「やっばいマジ無理!」



って片手で文字をこすって消した。




す、き、って。




「…あ、あの」


「うん、ごめん。忘れて。めちゃくちゃ恥ずかしいことした」




あ、慶太くん、顔が赤い。


あたしもね、とっくに真っ赤だよ。




お互い黙り込んで、あたしは床を見つめてる。


慶太くんのほうは、ちょっと見れない。



「芙祐ちゃんが手紙がいいっていうから、無理した。事故」


「……手紙じゃないじゃん」



「手紙なんか残るだろ。いやもう、ほんと。忘れて、お願い」



腕で赤い顔隠す仕草。


ドキドキドキドキ、どうしたらいいの?



「…て。手紙より嬉しいかも」



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