【完】ぎゅっとしててね?
映画が上映されるのは5番の部屋。
入った途端。



「なにこれーっ」


きらきら、目を輝かせてる。
ね。こういうの好きでしょ、芙祐ちゃん。



「カップルシートってはじめて」



繋がったコバルトブルーのソファの前に、黒いテーブルが一つついてる。



うまい空間設定してるんだよね、ココって。
少し湾曲したソファのおかげで両隣は見えないし。
ソファのサイズもまたちょうどよくて。



もっとこっちきたら?
なんてこと言わなくても、必然的にいい感じの近さになる。



「何?」


これでもかってくらい、ぴっとりくっついちゃって。



「スマートにらぶらぶデートスポットに連れてくるチャラ男……」



久しぶりに言われた。
もうちゃらくないって。



「あたしとの思い出でいっぱいにするもん」



つーん。
なにその拗ねた顔。



「頑張って?」


「むかー」


膨らました頬を、元に戻したと思えば。


ネクタイをクイっと引っ張られて。


ちゅっ、って。


「ははっ」


男前なキスするね。


そんな芙祐ちゃんもキライじゃないよ。




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