【完】ぎゅっとしててね?
待ちに待った放課後。



やっと教室でふたりきりになった。



1番前の席に芙祐と、隣の列の後ろから2番目に俺。



……遠。
話しづら。



……パチン。


芙祐は黙々と作業を続けてる。
たまにきらっきら輝いてる派手なスマホを手に取って。
多分彼氏とメールかなんかしてるんだろうな。



桜木慶太、来るかもしれないし。
早いとこ話終わらそう。


高速で冊子をつくりあげた。


いつもの芙祐の作る冊子と同レベルに雑だけど。



荷物をまとめて、逃げる体制は整えた。



一番前の席まで歩く。


芙祐の席の前に立つと、顔をあげてこっちを見た。


なんでこっち来るの?って、そんな困った顔で見んな。




「あのさ」


「なに……?」



芙祐は気まずそうに目をそらす。


パチン……冊子の四隅は完璧にそろってる。



「今まで言ったこと全部忘れて」


「え……何を?」


芙祐はまん丸な目をして、俺に問う。




「お前のこと好きとか……もうないから」



淡々と出てくる敗北宣言。




「……俺の存在ごと忘れて」



そう付け足したら、芙祐の目、少し震えた。


できればもう少し欲しい。




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