【完】ぎゅっとしててね?
慶太くんにばれなければ、英文科まで、
見に行ってもいいかな。



藍ちゃんが匠くんに用事があるっていうから
あたしもついて行った。



「匠ー」


って、藍ちゃんが彼氏を呼ぶ。


あたしはそのそばで、茶色い髪を探す。



……いない。


慶太くん……あ、いた!



「……え」



女子に囲まれてる慶太くんは、髪を黒く染めてた。





黒い髪、初めて見た。
ド真っ黒の海苔みたいな色じゃないよ。
自然な黒。


似合うし、かっこいいし、
あたし、目を奪われた。
藍ちゃんもこっそり目を奪われてた。


でも、なんで?



「匠くん、なんで慶太くんって髪染めたの?」


「あー……。えっと、ほら。受験生だから?」



藍ちゃんに蹴りを入れられるほど不自然な返し。
ありがと、正直者の匠くん。




「頭髪検査であたしに会いたくなかったんだ?」



語尾が震えた。



涙、でそうになった。



「……うん。そう言ってた」





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